302 研究施設の現状と将来計画
8-5 装置開発室
装置開発室は分子科学の新展開に必要な新しい装置および技術を開発する事と日常の実験研究に必要な部品および 機器の設計・製作に迅速に対応するという2つの役割を担っている。新しい装置の開発には,実験研究者との密接な 協力体制で取り組んでおり,平成17年度からは共同利用機関の活動の一環として所外研究者からの製作依頼も受け 付けるように体制を整えた。これにより,装置開発室固有の技術の維持と向上に研究者と技術者が一体となって取り 組んでいる。また,日常の実験研究で必要な工作依頼や緊急性を要する依頼に対しては加工技能を持つ短時間契約職 員の協力により対応している。この様に,装置開発室の重要な業務である新しい装置・技術の開発と日常の実験研究に 対する技術支援との両方に技術職員が取り組んでいる。
8-5-1 独自技術の開発
機械技術では,平成18年度から「脆性材料の超精密加工」として,国立天文台の先端技術センター設置の超精密 加工機を利用して,赤外光用の光学材料である硫化亜鉛(Z nS )結晶を用いた回折格子の試作を行っている。これは 名古屋大学及び国立天文台との共同開発として実施している。この共同開発は赤外天文観測用の光学素子製作を課題 としてきたが,その他に平成20年度は,レーザー用の光学結晶を冷却するヒートシンクの素材に用いる銅タングス テン(C uW )のテスト加工を行った。平成21年度はこの材料と Z nS の最適な加工条件を探索する計画である。
もう一つの「小径工具を用いたマイクロ加工」についての取り組みも4年経過し,100mm以下の工具を使うノウハ
ウが蓄積されてきた。平成19年度はサブミクロン駆動の X Y Z ステージを導入し,微小切り込みや精密位置決めなど 新しい加工法を応用しマイクロ部品の製作を行った。平成20年度はオンマシン計測が可能な C N C フライス装置の開 発を開始した。今後はこのマイクロ加工装置を完成させ,多方面からの研究支援に対応する計画である。
電子回路技術では,高速化や多機能化が進む電子回路の需要に対応するために,C P L D や F P G Aなど,プログラマ ブル論理回路素子を用いたカスタム I C の開発を行っている。また,平成18年度より,東京大学大規模集積システム 設計教育センター(V D E C )を利用したアナログ集積回路の開発技術の導入に向け,バイオセンサーに用いる C M O S 集積回路の試作設計を中部大学の協力を得て進めている。今後は,L S I の設計・製作・評価のためのノウハウを蓄積 しユーザーの要求に迅速に対応できる体制を整える計画である。
8-5-2 設備
装置開発室の設備は,創設から30年以上経過し老朽化,性能不足,精度低下などが進み,分子研の新しい展開を 担う研究支援に影響するため,毎年,重要事項として対策の検討を進めている。平成16年度から中村所長の配慮で, 計測評価のための機器の一部が新規導入および更新され,先端技術から取り残される事態から踏みとどまっているが, 加工設備に関してはまだ十分とは言えない。今後さらに研究所の方針に合わせた設備計画を運営委員会等で検討して いく事とする。
高度な加工設備は機械本体そのものも高価であり,また設置環境を整え,維持管理など付帯経費も必要であること から,導入はなかなか困難であるが,他機関,他大学または民間企業を含め,すでに設備されている機器を利用する 方法も検討していきたい。現在,国立天文台が所有している超精密加工機の利用を行っている事例もあるが,これらは, 年度毎に共同開発として利用申請書を提出し採択される必要があり,研究支援や速やかな対応には向かない面もある。 また,新規な材料等を加工する場合には,加工条件の探索から始まるので,長期に亘っての使用,共同利用の場合の 研究内容との整合性,更には,利用料や派遣経費などの問題がある。これらを踏まえ,研究支援に効果的な加工機器 活用を調査・検討していく。